SAP FI 認定資格(C_TS4FI) 合格へのロードマップ ~SAP 財務会計 認定試験(前編)~

現役講師コラム

C_TS4FIは、SAP S/4HANA Cloud Private Edition(SAP Cloud ERP Private)の財務会計を対象とした認定試験です。現在の試験は、選択肢から正答を選ぶだけではありません。実際のシステムにログインし、示された要件に沿って設定や処理を行い、その結果が採点されます。制限時間は3時間です。

この形式で問われるのは、用語を覚えているかどうかだけではなく、「どの設定が、次の処理にどう影響するのか」を理解し、迷わず画面を操作できるかどうかです。私が受験したときも、設定項目を単独で暗記するより、組織構造、マスタ、伝票、後続処理までのつながりを意識して学んでおくことが重要だと感じました。

本コラムでは、C_TS4FIの認定試験の対策内容を前編と後編に分けてご紹介します。

まず、今回の前編では、学習範囲のうち土台となるS4F12と、支払を中心とした追加設定を扱うS4F13を取り上げます。単なる項目一覧ではなく、各設定が何のためにあり、どこにつながるのかを順に見ていきましょう。

後編では、その土台に蓄積されたデータを決算で整えるS4F15と、固定資産のライフサイクルを扱うS4F17を解説します。

試験範囲と学習の優先順位

C_TS4FIの学習範囲は、SAPのラーニングジャーニーで確認できます。次の6コースが含まれています。

財務会計の設定と操作に直接つながるS4F12、S4F13、S4F15、S4F17を中心に学び、前編では最初の2コースを解説します。

順序コースコース名代替コース
1S4F12Customizing Core Settings in Financial Accounting in SAP S/4HANATS4F01
2S4F13Configuring Additional Settings in Financial Accounting in SAP S/4HANATS4F01
3S4F15Configuring the Financial Closing in SAP S/4HANATS4F02
4S4F17Configuring Asset Accounting in SAP S/4HANATS4F02
5S4C03Implementing SAP S/4HANA Cloud Private Edition-
6SL_RISE419Introducing RISE with SAP Methodology for SAP Partners and Customers-

なお、S4C03はSAP S/4HANA Cloud Private Editionの導入プロジェクト全体、SL_RISE419はRISE with SAPの方法論や進め方を扱うコースです。どちらも財務会計そのものの設定を中心とするコースではないため、システム操作型の試験対策では優先度を下げてもよいでしょう。ただし、導入プロジェクトの全体像を理解するための知識として、余裕があれば確認しておくことをお勧めします。

代替コースに記載されている、TS4F01とTS4F02はアカデミーコースと呼ばれるものです。

アカデミーコースとは、特定のSAP製品やモジュールについて、初心者から実務レベルまでを短期間で体系的に習得できる集中研修プログラムです。通常の単発コースを組み合わせた長期・集中的なカリキュラムになっています。

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S4F12:財務会計の土台をつくる

1.このコースの位置づけ

S4F12は、会計伝票を処理するための基本設定を学ぶコースです。会社コードなどの組織単位を定義し、G/L勘定やビジネスパートナを整え、伝票を登録できる状態にします。後続のコースで扱う支払、決算、固定資産も、この設定の上で動きます。

 

2.具体的に扱う内容

コースでは、主に次の内容を扱います。

  • ・SAP S/4HANAとSAP Fioriの概要
  • ・組織とマスタ:FIの組織ユニット、元帳の基本設定、G/L勘定(勘定科目のマスタデータ)、利益センタ(利益を管理するための管理単位)、ビジネスパートナ(取引先のマスタデータ)
  • ・伝票:伝票タイプ(伝票の種類を決めるもの)と伝票の番号範囲、項目ステータス(マスタや伝票の入力項目の必須・任意・非表示を決めるもの)、伝票分割(1つの会計伝票をレポートのために適切に分ける機能)、反対仕訳
  • ・期間と権限:会計年度、通貨、会計期間、転記権限

ここで意識してほしいのは、設定が独立して存在しているのではないという点です。たとえば、会社コード(一つの会社を表すもの)には勘定コード表(会社で使用する勘定科目の一覧表)が割り当てられ、その勘定コード表の中にG/L勘定を登録します。さらに、勘定グループ(G/L勘定を種類ごとに分類するためのグループ)がG/L勘定の番号範囲や画面項目を制御します。この縦のつながりが頭に入っていないと、設定画面で何を決めているのかが分からなくなります。

 

3.試験で特に押さえたいポイント

ポイント①:会社コードの登録と割当関係

まずは、会社コードの登録です。既存の会社コードをコピーして必要な値を調整する流れだけでなく、会社ID(法人を識別するもの)、管理領域(原価・収益・利益を管理する単位)、勘定コード表などとの割当関係も確認してください。

 

ポイント②:勘定グループとG/L勘定の登録

次に、G/L勘定の勘定グループと新規G/L勘定の登録です。勘定グループは、同じ性質の勘定科目をまとめるだけでなく、番号範囲や入力項目の制御にも関わります。G/L勘定については、勘定コード表レベルと会社コードレベル(何ごとに登録するデータか)の役割を区別し、どの情報が複数の会社コードで共通になり、どの情報が特定の会社コード固有になるのかを説明できる状態を目指しましょう。

 

ポイント③:伝票タイプと入力項目の制御

伝票タイプは、どのような取引を記録する伝票かを分類し、番号範囲や使用できる勘定タイプなどを制御します。項目ステータスや転記キー(会計伝票の借貸などを決めているもの)との関係も含め、「この設定を変えると伝票入力画面がどう変わるか」を確かめながら演習すると理解が深まります。

 

ポイント④:ビジネスパートナと仕入先マスタの関係

仕入先マスタは、SAP S/4HANAではビジネスパートナを通じて管理します。ビジネスパートナグルーピング、仕入先勘定グループ(仕入先をグルーピングしている)、番号範囲の対応関係を押さえ、仕入先として必要なロールや会社コードデータを確認してください。名称が似た設定を別々に暗記するのではなく、一つの仕入先を登録するまでの流れとして捉えるのがポイントです。この関係性について簡単に説明すると、ビジネスパートナ登録時に、ビジネスパートナグルーピングを指定することで、そこに紐づけてある仕入先勘定グループが決まります。ビジネスパートナマスタの番号範囲をビジネスパートナグルーピングで決定し、仕入先勘定グループで仕入先マスタの番号範囲を決めています。

 

ポイント⑤:反対仕訳の目的と設定

反対仕訳では、転記済み伝票を取り消す意味と、反対仕訳理由が転記日付やマイナス転記などの処理にどう影響するかを確認します。元の伝票を消すのではなく、履歴を残したまま訂正するという会計上の考え方と結び付けておくと、操作の目的を見失いません。

 

4.学習の進め方

S4F12は、一度通して終わりにしないでください。最初は個別の設定に見えても、S4F13以降を学んだ後に再度復習し、演習を通すと、なぜその組織設定やマスタが必要なのかが見えてきます。各演習では、入力値だけを追うのではなく、「何を登録したか」「どこに割り当てたか」「その結果、何ができるようになったか」を自分の言葉で整理しましょう。ベースになるコースだからこそ、繰り返す価値があります。

組織、マスタ、伝票、元帳、銀行・支払が相互につながるイメージ

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S4F13:支払を中心に、実務の流れをつなぐ

1.このコースの位置づけ

S4F13は、S4F12で整えた基本設定とマスタを使い、日常業務で必要となる追加機能を学ぶコースです。特に自動支払(支払処理の自動化機能)は、仕入先マスタ、未消込明細、支払方法、銀行、支払媒体(銀行に支払データを送るためのファイルや帳票)が一連の処理としてつながるため、設定と実行を往復しながら理解する必要があります。

 

2.具体的に扱う内容

コースでは、主に次の機能を扱います。

  • ・自動支払(支払処理の自動化機能)
  • ・銀行口座
  • ・督促(督促状を自動作成・送付する機能)
  • ・連絡文書(取引先に送る各種通知文書)
  • ・特殊仕訳取引(通常の売掛金・買掛金とは区別して管理したい取引を処理するための機能)
  • ・未転記伝票(転記前の伝票の保存機能)とワークフロー
  • ・チェックと代入(伝票入力の補助機能)
  • ・FIデータのアーカイブ(データの退避)

機能の幅は広いものの、試験対策で必要とされるのは、特に銀行関連のマスタと自動支払プログラムのつながりです。

 

3.試験で特に押さえたいポイント

ポイント①:銀行・取引銀行・取引銀行口座の区別

銀行関連では、「銀行」「取引銀行」「取引銀行口座」を区別してください。銀行は金融機関そのものの情報、取引銀行は自社が取引する銀行を会社コードの中で表すもの、取引銀行口座はその銀行に自社が保有する具体的な口座です。この関係性を理解すると、口座ID(自社の銀行口座を識別するID)や取引銀行口座に関連するG/L勘定をどこで設定するのかが整理できます。

 

ポイント②:自動支払の設定とマスタの連動

自動支払プログラムでは、会社コード単位・国単位の支払方法、取引銀行と口座、銀行選択、仕入先マスタや未消込明細の支払条件が連動します。実行画面だけを覚えても、支払提案でエラーが出たときに原因を追えません。どのマスタやカスタマイジングが支払対象の選定、使用銀行の決定、支払媒体の作成に関わるのかを、処理順にたどれるようにしてください。

 

ポイント③:支払提案から支払実行までの流れ

実行時は、パラメータ入力、支払提案の作成と確認、必要な修正、支払実行という流れを押さえます。特に支払提案は、対象明細や例外を確認する重要な段階です。正常終了の手順だけでなく、「なぜ支払対象にならなかったのか」をログから確認する練習もしておくと、設定と実行の理解がつながります。

 

4.学習の進め方

S4F13では、自動支払の一連のシナリオを最初から最後まで繰り返す方法が効果的です。仕入先と請求書を準備し、支払条件を確認し、支払提案から支払実行まで進めたうえで、設定を一つ変えると結果がどう変わるかを試してください。演習後にはS4F12へ戻り、会社コード、G/L勘定、ビジネスパートナの設定がどこで使われたかを確認すると、知識が定着します。

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受験時のポイント

3時間という試験時間は長く見えますが、認定試験のシステム環境へのログイン、設問の確認、設定、結果の見直しまで含めると余裕は大きくありません。分からない一問に時間を使い過ぎず、内容を見て着手しやすい問題から進めていきましょう。

試験は複数の問題に分かれていますが、それぞれが独立しており、番号順に解いていく必要はありません。例えば、タスク5を後回しにして、先にタスク6を解いても問題ありません。

また、認定試験では、問題のテキストは英語版だけではなく、日本語の機械翻訳版が用意されています。この機械翻訳は一般的なものと異なり、SAPに特化したSAP用語に対応した機械翻訳ですので非常に分かりやすいです。ただし、機械翻訳であるため、どうしても語順などが不自然な文章もありますので、注意してください。

さらに、FioriラウンチパッドやSAP GUIへのログインは、日本語でも問題ありません。私も実際に日本語でログインし、最後まで解答しました。結果、問題なく合格できています。

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トレーニングの受講方法

今回紹介した学習コースとラーニングジャーニーは、SAP Learningのこちらから確認できます。

SAP LearningやSAP Learning Hubを使って、すべてを独学で学ぶこともできます。

さらに、JTPでは、S4F12、S4F13、S4F15、S4F17、TS4F01、TS4F02を講師主導型トレーニングとして開催しています。

独学でも学習は可能ですが、講師主導型トレーニングでは、設定同士のつながりを順序立てて学び、分からない点をその場で確認できます。また、SAP Learning Hubのライセンスをお持ちでない方でも、受講期間中は演習環境を利用して実際に操作できます。知識を読むだけで終わらせず、試験で必要な操作力まで身に付けたい方には、講師と一緒に演習を進める方法が近道です。

「独学で進めているものの、設定の意味や操作の流れに自信が持てない」という方にも、講師主導型トレーニングはおすすめです。疑問を抱えたまま先に進むのではなく、一つひとつ確認しながら演習に取り組むことで、理解を確かなものにしていけます。独学でのつまずきを減らし、着実に学習を進めたい方は、ぜひ受講をご検討ください。

後編では、決算処理を扱うS4F15と、固定資産管理を扱うS4F17について、試験対策で押さえたいポイントを解説します。お楽しみに!

※本コラムは2026年10月時点の試験内容に基づく解説です。

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筆者紹介
氏名伴 直樹(バンナオキ)
肩書きSAP認定講師
担当分野FI / MM / CO
趣味プラモデル作成

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